「引きこもりやニートなんて、昔は存在しなかった。衣食住恵まれた現代の若者を蝕む病気だ。」
こんな話を聞いた事がある方は多いだろう。だが、ちょっと待ってほしい。それは本当なのだろうか?
呼び方や言い方が違うだけで昔から存在したのではないだろうか?戦前含む昭和年代で考えてみる。
1.現在日本の引きこもり、ニートの定義と人数
2019年の厚生労働省のデータでは、ニート総数は74万人、推定引きこもり人数は、15~39歳が54万人、40~64歳が61万人で、合わせて115万人。
だが、無職、失業者、家事手伝い、フリーター、の定義も組み合わせると、人数はかなり変動する可能性がある事は、注視した方がよい。あくまで概算である。
特に最近では、女性の引きこもりも、かなり増加している傾向にある。
2.昔は引きこもりや、ニートは存在したのか?
2-1 昔からある、引きこもりやニートに近い言葉
風来坊、穀潰し、ただ飯ぐらい、親のすねかじり、家事手伝い、居候、ろくでなし、無頼、無宿者、ばくち打ち
若干微妙なのもあるが、昔からある言葉である。
2-2 昔のワイドショーでも、ひきこもり問題を扱っていた
1980年頃に放送していた、昼のワイドショーの視聴者からの相談コーナーで、引きこもりの再現VTRがあった。
30歳くらいの息子が働きもせず、部屋に閉じこもってアイドルのビデオばかり見ており、両親に暴力をふるう為、どうしたらよいか悩んでいる、みたいな内容だった。
かなりリアルに表現されており、子供ながらに怖かった事を覚えている。現代では、特に珍しくも無いが、1970年代頃から普通に存在したのは間違いない。
2-3 宗教勧誘のチラシ
これも1980年頃の記憶だが、新興宗教の勧誘のチラシが新聞に入っていた。家庭の悩みの項目欄に、
「子供が部屋から出てこない」
「働かない、就職してもうまくいかない」
「無気力で何もしようとしない」
「こういった悩みをお持ちの方はぜひ御相談ください」
、と書かれていた。
昔から悩みのある人間をターゲットにする新興宗教が存在するのは当たり前と言えるのかもしれない。
昔から引きこもりやニートといった人間は少なからず存在しており、2000年頃から可視化されてきただけだと思われる。
2-4 座敷牢や私宅監置
皆さんは、「座敷牢」や「私宅監置」という言葉を聞いた事はあるだろうか?
座敷牢(ざしきろう)とは、日本の江戸時代から明治にかけて存在した、家の中に設けられた簡易な牢屋の事である。
「私宅監置(したくかんち)」とは、主に明治から昭和初期の日本で行われていた、精神病患者を家族が自宅で監禁・隔離する制度の事を指す。
どちらも、、精神障害や問題行動を起こす家族を一時的に隔離する為の施設として使われた。
現代の価値観からすると、とても考えられない制度、慣習であるが、普通に行われていた。
3.なぜ昔に比べて増えたのか?
①生活が豊かで便利になり、働かなくても、外に出なくても何とかなる。
これはまさしくその通りだし、今更戻すわけにも行かない。
現在では、在宅ワークを含め、外出しなくても稼げる方法があり、引きこもりの人の一助には役立っている。
②TVゲームやネットの普及で家にいても面白い事がある。
これもまさしくその通りだし、今更戻すどころか増々進化していくだろう。とにかく、今のゲームや、アニメは大変面白いのである。
更に、YOUTUBE、huluやNetflixなどの動画配信サービス、エロ動画なども、外出する機会を奪っていると言える。
放っておけば、朝から晩まで、いや、夜中でもずっとゲームをしている、動画を視聴しているという経験は誰でもあるだろう。
③家族や親戚間の繋がりが薄くなった。助けてくれる人がいない。
昔は、何らかの問題ある子供を抱えても、親戚のおじさんの仕事を手伝うとか、兄貴の仕事についていくとか、フルタイムではなく、待遇はバイトでも、外に引っ張り出してくれる人間がいた。女や賭け事をネタに外に釣り出す手もあろう。
よく昔は家父長制が強く、殴って強制したとか、外に叩き出した、なんて話をTVで発言しているコメンテーターがいるが、実際の所、聞いた事も見た事もあまり無い。
兄弟が男女7人くらいいれば、1人くらい変わったのがいるのは普通であった。
④就職する際に、面倒な手続きが多くなった。
昔であれば、親戚や周囲の人間が仕事を紹介してくれたり、日雇いがあった。履歴書を出す必要もなければ、スーツを着ていく必要もなかった。
今は、バイトの面接でさえスーツを着ていく人もいる。
現代では、仕事を探す場合、履歴書とか、職務経歴書とか書いて、スーツを着て、筆記試験、面接、役員面接等受けなければならず、非常に面倒臭い。
特に注意したいのは、企業の採用担当者は、経歴に空白期間があるのを大変嫌うという事だ。
「この期間は何をしてたんですか」とか「前の会社はなんで辞めたんですか」こればかりだ。嫌になってしまう人は、この部分に引け目を感じてしまうのだろう。
⑤弱者を利用する、追い詰めてばかりの不寛容な日本社会になった。
何で働かないのか、何ですぐ仕事を辞めるのか、何で家から出ないのか、とにかく追いつめてばかりの日本社会だ。更に、弱者を利用する社会でもある。
引きこもり系のブログは、就活情報サイトのリンクや、自宅でも高収入バイト等のリンクが非常に多く、ニートや引きこもり専門の就活サイトのリンクもある。
どうせほとんどが派遣である。今流行りのスキマバイトも似たようなものである。
政府も就職氷河期支援の政策やプログラムを実施しているが、大企業に入社出来るわけもなく、人材不足の介護業界や、警備、清掃が関の山だろう。
働き手など、外国から連れて来れば良いと思っている。
4.若者の就職難の時に、ニートや引きこもりという言葉が流行った?
昔から一定数は存在したはずだが、特に2000年頃から、TVや雑誌にも取り上げられ、社会的にも認識されるようになったと思われる。
氷河期世代の就職難に合わせて問題が噴出してきたのは間違いない。何社履歴書を送付しても、面接を受けても、採用されなければ、人間誰しも嫌になるものだ。職業訓練校という手もあるが、定員がある。
実際仕事が無いのに、「今の若者は~」とか、「選ばなければ仕事なんていくらでもある~」とか、「自分達が若い時は休みなんて殆ど無かった~」とか、年配者の認識はそんなものであった。
5.昔から存在したのは間違いない
以上のように、昔から引きこもりやニートと呼ばれる人が少なからず存在したのは間違いなさそうである。
昔であれば、多少適当でもよかったし、家族や一族、親戚といった繋がりがあり、その中で解決出来る場合もあった。
現代では、引きこもり支援等のNPO団体は確かに存在するが、ぼったくりや、反社の貧困ビジネスに近い所もある。本気で解決する気があるのか、という点においては疑問を感じずにはいられない。
不寛容な社会に生きづらさを感じている人が非常に多いのは事実だろう。
更に問題なのは、今後もどんどん増加していくのは間違いないという事である。SNSの発達によって、自分の居場所が自室の一空間に制限されていくからである。
「居場所」が無い人は、どんどん追い詰められていき、自殺するか、暴れるか・・・という事に成ってしまう。もっと色々と適当でいいのだ。あとはカネを多少なりとも稼いでいれば何とかなるはずだ。
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