日ユ同祖論(にちゆどうそろん)とは、世界中に散らばった古代イスラエルの失われた10支族の一部が日本に渡来しており、日本人(大和民族)とユダヤ人(古代イスラエル人)は共通の先祖ヤコブを持つ兄弟民族であるという説。
確かにそれなりの類似性は見られるが、テレビや雑誌ではこじつけや陰謀論で紹介される事が多い。そこで、これは日本が戦略的に仕掛けた工作ではないか?と、疑ってみた。
1.戦略的に仕掛けた工作である可能性
日本で日ユ同祖論を強く提唱した、学者の佐伯好郎(1871年~1965年)が、晩年、弟子に語った事がある。
「日本の矮小な開発計画では駄目だ。ユダヤ人の大資本を導入してやろう。それにはユダヤ人の注意を日本に向けさせる必要がある」
はっきり言えば金目当てだった事が分かり、弟子が仰天した、というエピソードがある。
確かに、イスラエル人、というかユダヤ人には日本人に親近感を感じる人間が少なくないらしい。日ユ同祖論もそうだが、杉浦千畝(東洋のシンドラー)などの話もあってシンパシーを感じるのだろうか。
勿論ユダヤ人にも色々存在し、様々な国籍を持つ人間もいれば、イスラエルで暮らす人もいる。
だが、日本に親近感を持ってくれるのは悪い事では無い。世界中の大企業のCEO、大銀行の関係者、政府要人にユダヤ人が多数存在するからだ。だからこそ根強いユダヤ陰謀論が存在するともいえる。
日ユ同祖論を現代でも真面目に研究している学者は複数存在するし、それなりの類似性が認められるのも確かである。
2.日ユ同祖論のはじまり
明治期に来日したスコットランド人のニコラス・マクラウドは、日本とユダヤとの類似性の調査を進め、世界で最初に日ユ同祖論を提唱した。
彼は韓ユ同祖論も唱えていた為、何でも失われた10支族と結びつけるいい加減な人物という噂もある。
明治後期に佐伯好郎らが同調し、1930年代には対日禁輸政策を取る米国への対応策の一環として立案された、河豚計画(ユダヤ人難民の満州入植計画)などに利用された。
3.根拠とされる代表的なもの
確かに類似性は少なからず認められる。御存知の方も多いと思うが、代表的なものを御紹介しよう。
3-1 神道とユダヤ教に類似点がある
神道の儀礼・様式、神社の構造、祭り、神事、鏡餅、鳥居、契約の箱と神輿、修験道、etc…
これらは、何かしらの類似点が認められる。
3-2 秦氏の存在
秦氏とは、第15代応神天皇の頃に大陸から渡来して日本に帰化し、様々な技術や制度を伝えたとされ、非常に有力な帰化氏族である。秦河勝が有名。
百済から来たとか、始皇帝の末裔だとか、10万人渡来したなど、様々な説がある。この秦氏が景教(キリスト教のネストリウス派)徒のユダヤ人が祖先であるという説があり、日ユ同祖論で持て囃された。
3-3 ヤマト言葉とヘブライ語の類似
アッパレ | APPR | 栄誉を誇る |
アラ・マー | YL・MH | どうした理由・何? |
アナタ | ANT | 貴方 |
アリガトウ | ALI・GD | 私に(とって)・幸運です |
オハリ | AHR | 終端 |
サラバ | SLMH | シャロマー 平安あれ |
スケベー | SKBH | 肉欲的に寝る |
ダマレ | DM・ALI | 沈黙を守れ・私に(対して) |
ノコッタ | NKIT | 征服した |
ハッケ・ヨイ | HKH・IHI | 投げうて・よろしく |
ハイ | HIH | 生きている/居ます |
ワル | YWL | 凶悪な者 |
赤字で示した言葉はギャグに思える。こじつけどころか、語呂合わせや、ウケを狙って後世の人間が適当に作ったような気も・・・。
3-4 ユダヤ人埴輪
古墳時代のものとされる、ユダヤ人によく似た埴輪が、複数体出土している。しかし、ユダヤ人が下図のスタイルになったのは、中世以降であるとされ、真偽は不明。だが、三角帽子の古代日本人もしっくりこない。
4.まとめ
詳しい考察を行うには、文字数が全く足りないが、眉唾と言える程トンデモ陰謀論ではなさそうである。何らかの関係はあるのであろう。特に皇室や天皇との関係を指摘されているものが多く、ユダヤ人に親近感を持たせる事に一役買ったかもしれない。
佐伯好郎以外に、代表的な人物もあまり出てこない為、日本政府が企てたとは言えないようだが、現代まで続く説である事もまた事実である。
世界で一番ユダヤ人差別が無い国は日本らしく(そもそも余りユダヤ人に興味があるとは思えないが)、悪い事では無いかもしれない。
政治、経済、軍事、外交等、色々面倒な事もありそうで、国益の為にも謎に包んでおいた方が良いのかもしれない。
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